ひさろぐ分館

分けて書きたい用

劇団壱劇屋東京支部「心踏音」/アフターイベント「タイ踏音」@池袋 シアターグリーンBIG TREE THEATER 10/22ソワレ

 

 

 6月の「猩獸」ぶりの壱劇屋さんへ行ってきました。結論だけ先に言うと、かなりぼろぼろに泣いた。

 心踏音は、5ヶ月連続上演中の「五彩の神楽(再演)」のうち、3つめのお話。8月も9月も諸々あって(推しのツアー&推しのツアー!)行けなくて、ようやく1神楽目。

 5本連続上演とはいえお話自体は独立しているので、なんの予習もせずいつもの完全初見ノーガードだったけど、安定の面白さ!!!壱劇屋さんは昨年2021年末の「二ツ巴」が初だったのですが、既に「とりあえず絶対面白いものが観られる」という安心感があります。脚本も好きだけど演出で毎回「すす、好き!!」てなる。語彙無さすぎん?

 今日は以前配信で「独鬼」を観てくれた友達を誘って観劇。いつも軽率なオタクに付き合ってくれてありがとう。やはりオタクが持つべきは信頼できるジャンル外の友達である。彼女にとって初現地の壱劇屋なので、あえてこの"タイツ回"を選びました☺️

 ワードレスって、一瞬とっつきにくそうに思われるかもしれないけど、ここでしか味わえない観劇体験があるのでもっとお席が埋まって欲しい〜〜〜この回はS席完売とのことでした。うれしい。今回見てやっぱり「二次創作するオタク」「余白や行間を読みたいタイプのオタク」はめちゃくちゃ向いてるな……としみじみ思った。

 

前説

 今日の担当は西分さんでした〜〜うれしい。二ツ巴で「ウワめちゃかっこ良い〜!」ってなった弓使い役の方なので、真っ先にお顔とお名前が一致した人がでてくるのうれしいw 他の劇団員さんもちゃんと覚えたい〜

 いつもの注意事項に加えて、西分さんが勝手にやっているクイズで「4ヶ所でこんなことやってるので見つけてくださいね!」というのがあったんだけど、すみません、最初のしか分からなかったっていうか、早々に「それどころじゃねー!!」ってなりましたw

 

この先死ぬほどネタバレしますので、知りたくない方はここでさようなら🙌

 

 

 

 

 

 

本編の感想

 んも〜〜〜とりあえず真っ先に書いちゃうけど逆再生なに!?テネット!??しかも結構な尺ありましたよ!??!てかテネットは映画だからカットがかかるけどここ劇場よ!??!?!初演版をまだ観てないので差分は分からないのですが皆さんが話題にしてるのはたぶんここの演出のことですよね。いやーーーよくやる……おもしろい……

 ストーリー上、岳人(トクナガさん)がフミちゃん(今中さん)を手にかけるわけがないのと、鈴のギミックが最初から分かっていたので、状況は理解していたのですが岳人が槍を持った瞬間になんかこう体がギュワーーーーッてなりました。つらすぎる。だがそこがいい。

 状況が分かった上であの逆再生演出だったので「たのしい……!」と「しんどい……!!!」が交互に来て大変だった。役者さんももちろん大変ですけど!

 

オープニングからして、すれ違い様に斬り合うふたりのうち岳人は殺す気がないのが分かるのがすごく良い。隙があるのに斬らずに殴るところ。

 笑人(竹村さん)が盲人(吉田さん)を村から連れ出すところ、階段の位置を叩いて教えてあげたり杖を掴んで先導してくれたりして、それだけで彼らの関係性が伝わるのが良いですよね。スピンオフ回もめちゃくちゃ観たかった……御社の納期さえなければ……

 盲人とフミが出会ってから、周りとは違う者同士が手探りで関係を深めていく描写がとっっっても丁寧で美しくて、最初にタップダンスをするとこでいきなりぼろっと泣いてしまった。靴の最初の1音で泣いたの人生初だよ。もーーーめちゃくちゃ可愛いんだよふたりとも……。開演前に「集音マイクあるな……?」と気付いて、この規模の劇場ならノーマイクが普通だと思って気になっていたのですが、この音をきちんと拾う為のものだったのねー。

 フミのダンスは笑うようでもあり歌うようでもあり、それまで声が出せないことで塞ぎ込んでいた彼女の、「伝わること」の喜びが全身から溢れていました。ワードレスだからこそ「声の出せない彼女の唯一の表現」がすごく咀嚼しやすくて、新しい体験だったなー。

 賊が入り込んで交戦するシーンでは重心を落とした独学の剣術が見られますが、相手の位置を探る為にとっさに口を塞いで息を止めようとするのは可笑しみもあり、だからこそ彼の生き方がいかに人と違うかというのが出ていて良かった。

 フミを軸にして盲人もまた周りとうまく関われるようになっていき、それを周りの人たちも見守ってくれる穏やかな時間。冒頭からここまでで、きちんと「時間の経過」と「関係性の変化」を描いているので感情移入しやすかったな。

 

 そして訪れる悲劇。

 盲人がスポットを浴びて「彼から見えている世界」を視覚的に表現されたとき、こんなにも心許なくて、静謐で、寄る辺ないものなのかと痛感した。「暗闇」が怖いんじゃなくて、「反応が返ってこないこと」がものすごく怖かった。

 暗闇の中を探り、たどり着いたのがフミの亡骸だったときの絶望は、私の人生のどの時間とも比較できないものだと思う。自分にとってのひかりが、自分には認知できないところである日突然失われてしまった悲しみ。わかりようがない……こんなものいらない!って自分で目を抉ろうとするのがしんどい……

 

 岳人はたぶん、この道が正しいとは思ってないんだけど、たとえそれが間違いだとしても、娘の想い人に生きてほしかったんだよね。これは彼自身の優しさとエゴの結果なので、冷静な外野かつ社会人の私としては「話し合いで解決しなよ…!」ってなっちゃうけど。笑人はそれを側でずっと支えていて、顔をぐしゃぐしゃにして鈴を引き継ぐところでもーーーー涙止まらんかった。あそこで止められたら良かったのに、どうやったって親友に生きてて欲しかったんだね。最後は悲劇を終わらせる為に腹を括る羽目になるわけですが。

 一度だけ、盲人が振り向いて真ん中の何かに気付くような仕草があって、「今"何"を見た……?」と疑問に思っていたら、逆再生のあとフミ視点が加わってリプライズされたところも好き。演出が丁寧……!

 フミ視点になるとあまりにも辛く、自分が死んでしまったばかりに大事な人たちの歯車が狂っていくのを止められず、無力感が募るのがしんどくてしんどくて。笑人に向かってお辞儀をするところで、覚悟を決めてなにかを託すような、力のこもった眼差しをしてた。もう終わらせてあげてほしい、と願いを込めた眼。まるで幽体離脱みたいに、真っ白な衣装になるシーンも照明が映えてすごく綺麗。彼女がこの世のものでなくなったのが一目で分かるし、純粋さや健気さの象徴でもあったのかな。

 

 鈴人、ベストお前がいらんことするからや!オブザイヤー受賞です。殺すなら恋敵だけにしろ(恋敵でもだめだよ!)いらんことすな!!あと腰巾着ズ!!さすがに止めろや!!!もう3人仲良く地獄にお逝き。行ってたわ。君は何があってそんなに執着してたん??岳人に取り入りたいなら娘のことは大事にするだろし…戦場に鈴持ってくし…全体的にド阿呆だったので、彼のバックグラウンドがもうちょい見えると分かりやすかったのになーと思いました。

 

 あの場で岳人が躊躇いなく処刑したのもちょっと意外というか、やんちゃ達とはいえ身内にも手心がないのに、それでいて盲人のことは生かし続けようとするので、やはりエゴだな〜。しみじみ。

 

 今回竹村さんが槍だよ!長物はちょっと珍しいよ!とのことで大変楽しみにしていたんですが、まーーめちゃくちゃかっこよかった!!稽古場やゲネの動画もちょいちょい見てたけど、現地で「これかぁ!!」となるのが楽しいので、今後も供給頑張ってほしいです……!脚本のギミック的に「槍であること」に意味が付与されてるのもいいですね。笑人のアイコンとしてとても分かりやすいので。

 

 

 本編の最後は雨音がフミの慟哭の代わりのようで虚しく響き渡って終わるけど、エピローグでは2人がお互いの顔を見て抱き合って終わるのが、竹村さん優しいな〜と思った。これまではなんやかんや前向きに終わるお話しか見てなかったので、心踏音の悲劇レベルが分かりかねるのですが、お客さんに悲しい顔のまま帰ってほしくないのかな。こういう部分でめちゃくちゃエンタメだなー!って思えるところも好きです。

 

【追記】

数日経ってから初演の映像を見たんですけど、追加演出の逆回しパートが無いとかなり印象変わりますね。あと衣装の雰囲気も再演のほうが断然好き!殺陣の精度も、一手ごとの丁寧さが段違いだったように思います。

v2.kan-geki.com

 

 

アフターイベント

 さて、問題のタイ踏音です…w 撮影可のイベントだったので無駄に写真があります。カメラロールが賑やか……wwww

 チケット取った時は悲劇だって思ってなかったので「これはまたセルフ営業妨害のやつかな…?」と思ったのですが、腹捩れるくらい笑ってハッピーな気持ちで帰れたので結果オーライです!!

 開始前に西分さんから「本編の余韻はぶち壊しです!観たくない人はこのままお帰りください!!」と丁寧…?なアナウンスもありつつ、「むしろタイツ目当ての方!?」のアンケートにひっそり手を挙げるなどしました。他にも数名いた…よね?!撮影可だったのでアップしておきますが、本編はだいぶかなりちゃんとしっかり真面目に演劇やってます。本当です。信じてください。

 

 竹村さんのリングアナウンスに始まり、色とりどりのタイツ達がエアドラムとエアピアノを囲みながら盆踊りして開幕。だめだ〜〜〜ここ書いてるだけで既に悪夢みたいな文章になっとる。アカン。

 壱劇屋の正装こと全身タイツで本編の再現をする、というのが主な構成ですが、もうねぇ関西人のノリすごい。みんな喋る。よくもまぁ本編無口でいられたな?ってぐらいうるさい。褒めてますよ。

 はいじゃあやりますよ〜とさくさく進行するんですけど、OPの再現でタイトル幕がさぁっと収納された瞬間シームレスに主演の青タイツが出てきて(あまりの違和感のなさに崩れ落ちてる赤タイツこと西分さん)

 

 基本的に「壱劇屋の正装」なので、ゲストの方は着なくていいらしいんですけど、皆さんなぜかタイツの準備があるんですよね……!

「吉田さんは10年前にも着てくださってて……」と竹村さんが説明してるうしろで、下手から銀タイツこと鈴木亮吾さんが登場。

先月公演では1人だけ持ってなくて出られなかったので、翌日になって竹村さんがプレゼントしたものだそう……w

念願(???)の全身タイツデビューです。おめでとうございます!

 

フミちゃん(今中さん)が終始愛敬を振りまいてらして大変かわいかったです。ファンサえぐいて。

フミが突然死んでしまうシーンの再現では満を辞してカッパ(トクナガさん)が登場。妖怪出てきちゃった・・・ご自身の劇団で使ってる衣装?だそうです。

わぁ〜可愛いカッパの親子

 

 色とりどりのタイツ&お披露目した銀タイツ&カッパのひと(人?)と、非常に視界がうるさくカオスを極めた状態で1回目の最終決戦シーンの再現。しっちゃかめっちゃかすぎるし、トクナガさんは「黄桜ーーー!!!」って雄叫びだすし、なんかめちゃくちゃ良い声のテノールも響くし、カオス!!!!なお出番の無い人は舞台セットに格納されていました。フミちゃんが盲人のこと槍でブッ刺してて「再現とは・・・?」てなってた。

 

 トクナガさんによる「タイツ込みで今回のオファーだと思ってるから」「自警団の仕事はついで」などの問題発言も飛び出して崩れ落ちる様々なタイツたち。

 

 最後は竹村さんと吉田さんが真面目にお話ししてくださったのですが、2人ともタイツのままだし良いこと言ってた気がするけど全然覚えてません。やっぱりセルフ営業妨害なのかもしれない・・・!このトンチキぶりも含めて、良い座組だなぁと思いました。ほんとです。信じてください。

 一緒に行った友達も大満足だったみたいで、めちゃくちゃ楽しかった〜!!!

 

 次見られるのは・・・調整がつけられれば12月公演かな・・・「五色の神楽」、どれを見ても絶対面白いと思うので、興味があったら是非気軽にチケット取って欲しいです。

 

note.com

 

劇中の殺陣のワークショップとかもやってらしてめちゃくちゃ興味あるんだけど、さすがにぼっち観劇よりハードル高くてまだ参加できてない・・・😂